2026年現在、「ホロライブ中国」はどうなったのでしょうか。2019年に始動した中国向けVTuberグループ「ホロライブCN」は、1期生・2期生の計6名が2020年11月から12月にかけて順次卒業し、グループとしての活動を終えました。その背景には、桐生ココ・赤井はあとの台湾表記騒動、動画配信サービスBilibiliを中心に広がった炎上、そして運営元であるカバー株式会社の対応をめぐる問題がありました。
ただし、「台湾表記騒動が起きたため、6名が一斉に解雇された」「カバー株式会社が海外事業をすべて撤退した」という理解は正確ではありません。公式発表で確認できる卒業日、当時の運営会社の説明、谷郷元昭CEOが示した海外展開の方針を整理すると、ホロライブ中国の終了には、政治的な対立だけでなく、海外向けVTuber事業の運営上の難しさも関係していたことが分かります。
【ホロライブ中国とは】2019年に始まった6名の中国向けVTuberグループ

ホロライブ中国は、VTuber事務所ホロライブプロダクションを運営するカバー株式会社が、中国市場に向けて展開したグループです。日本国内のホロライブとは別に、中国語圏のファンに向けた活動を行い、中国の動画配信サービスBilibiliを主要な活動拠点としていました。
所属タレントは1期生3名、2期生3名の計6名です。2019年に1期生が活動を開始し、2020年3月には2期生3名が加わりました。日本のVTuber文化を海外へ広げる取り組みの一つであり、中国語を使った配信や現地のファンコミュニティとの交流が特徴でした。
ここで重要なのは、ホロライブ中国が日本のホロライブ所属タレント全員を指す名称ではないという点です。桐生ココと赤井はあとは日本側のホロライブ所属タレントであり、ホロライブCNのメンバーではありません。2020年9月の台湾表記騒動は、日本側のタレントをめぐって起きた問題が、中国向け事業にも大きな影響を及ぼした出来事でした。
当時のホロライブCNは、単に日本の配信を中国語に翻訳して届ける仕組みではありません。現地の言語や文化に対応しながら、所属タレントを育成する海外展開の試みでした。そのため、グループの終了は6名の卒業にとどまらず、カバー株式会社が中国向けに構築していたタレント運営モデルの転換点にもなりました。
【炎上の真相】桐生ココ・赤井はあとの台湾表記問題で何が起きたのか
騒動の直接的な発端は、2020年9月24日から25日にかけて行われた桐生ココと赤井はあとのYouTube配信です。両者は自身のチャンネルの視聴者データを紹介する中で、視聴者の多い国・地域に関する情報を取り上げました。その画面や説明に「台湾」の表記が含まれていたことが、中国語圏の一部視聴者から反発を招きました。
中国では台湾の政治的な位置づけが極めて敏感な問題となっています。視聴者データの表示であっても、台湾を「国」の一覧に含めて紹介したことが、台湾を独立した国家として扱ったものだと受け止められ、Bilibiliを中心に批判が広がりました。
一方、当時の報道やカバー株式会社の説明によれば、問題となった配信は、2人が台湾の政治的地位について独自の主張を展開したものではありませんでした。運営会社は、機密情報であるYouTubeの統計データを公開・二次利用したことと、一部地域の視聴者への配慮を欠いた言動を問題視しています。
カバー株式会社は2020年9月27日、2人について3週間の活動自粛を発表しました。ITmedia NEWSの同月28日付報道でも、この処分と、配信内で台湾が視聴者データの項目として表示された経緯が伝えられています。
ところが、騒動をさらに大きくしたのが、カバー株式会社による日本向けと中国向けの声明の違いでした。Bilibiliに掲載された中国向けの声明では、中国の主権と領土保全を尊重し、「一つの中国」の原則を支持する趣旨が示されました。一方、日本語圏では、中国向けに異なる政治的表現を含む声明を出したことへの批判も起こりました。
つまり、この問題は台湾表記だけで終わりませんでした。中国語圏では配信内容への反発が続き、日本語圏では運営会社の説明や対応の一貫性が問われるという、複数の問題が重なったのです。
【時系列で整理】ホロライブ中国の全員卒業までに何があったのか
ホロライブ中国の終了を理解するには、2020年9月の炎上と、同年11月に発表されたメンバーの卒業を区別して見る必要があります。カバー株式会社は、2020年11月12日に5名の卒業を発表し、11月16日には残る黒桃影の卒業と一部の日程変更を公表しました。
以下は、カバー株式会社の公式発表と当時の報道をもとに整理した主要な経緯です。卒業日は、公式発表で案内された予定日を記載しています。
| 時期 | 出来事 | 確認できる内容 |
|---|---|---|
| 2019年9月〜 | ホロライブ中国1期生の活動開始 | 夜霧、Civia、黒桃影らが中国向けの活動を展開。 |
| 2020年3月 | 2期生3名がデビュー | Doris、Artia、Rosalynが加わり、所属は計6名となる。 |
| 2020年9月24〜25日 | 台湾表記騒動が発生 | 桐生ココと赤井はあとの配信で視聴者データの台湾表記が問題視される。 |
| 2020年9月27日 | カバー株式会社が活動自粛を発表 | 2人に3週間の活動自粛を発表。中国向け声明も波紋を広げる。 |
| 2020年9月30日 | 運営会社が追加説明 | 日中の声明に齟齬があったことを認め、経緯と今後の方針を説明。 |
| 2020年10月19日 | 桐生ココ・赤井はあとが活動復帰 | 3週間の自粛期間を経て復帰。ただし、騒動をめぐる問題は残った。 |
| 2020年11月12日 | ホロライブCNの5名が卒業発表 | Civia、Artia、夜霧、Doris、Rosalynの卒業が公表される。 |
| 2020年11月16日 | 黒桃影の卒業も発表 | 残る1名の卒業が決まり、所属メンバー全員の卒業が明らかになる。 |
| 2020年11月〜12月 | 6名が順次卒業 | 公式発表の予定日は11月18日から12月27日まで。グループは活動を終える。 |
この年表から分かるのは、2020年9月の騒動から約2か月後に全員の卒業が発表されたことです。ただし、発表の時期が近いからといって、6名それぞれの卒業理由が公式に一つにまとめられていたわけではありません。
カバー株式会社の2020年11月12日付発表と、11月16日付の追加告知は、卒業するメンバーと日程を明らかにしたものです。これらの告知だけから、6名全員が台湾表記騒動を直接の理由として卒業したと断定することはできません。
【撤退理由を検証】なぜホロライブCNは解散に至ったのか
ホロライブ中国の終了を考えるうえでは、少なくとも三つの要因を分けて見る必要があります。第一は台湾表記騒動による対立、第二は運営会社の危機対応をめぐる混乱、第三は海外事業そのものが抱えていた運営上の課題です。
第一の要因は、中国向けコミュニティとの関係悪化です。 Bilibiliを主要な活動拠点としていたホロライブCNにとって、現地のファンコミュニティとの関係は活動基盤の一部でした。台湾表記騒動によって、グループの所属先であるカバー株式会社と中国語圏の一部ファンとの間に深刻な対立が生まれ、現地向けの活動を続けるうえで大きな障害となりました。
第二の要因は、カバー株式会社の危機対応に対する信頼の揺らぎです。 9月30日付の追加説明で、同社は日本向けと中国向けの声明に齟齬があったことを認めました。J-CASTニュースなどの報道によると、会社側は現地の協力会社と協議し、タレントや社員の安全を守るための緊急措置だったと説明しています。
同社は再発防止に向けた社内体制の整備も進めました。しかし、異なる言語圏に向けて異なる政治的表現を用いたことは、日本語圏でも批判の対象になりました。中国向けの反発を抑えるための対応が、別の地域では運営会社への不信を生むという難しい状況に陥ったのです。
第三の要因は、海外VTuber事業の採算と運営体制です。 カバー株式会社CEOの谷郷元昭氏は、2020年11月16日に公開した「ホロライブ中国について」という文章で、6名の卒業に言及するとともに、海外事業について、当時はまだ十分に採算が取れる状況ではないと説明しました。また、社員を増員して運営体制を強化していた矢先だったことにも触れています。
この説明は、ホロライブCNの終了を政治的な炎上だけで説明するのでは不十分であることを示しています。現地の文化や社会的な受け止め方への対応、タレントの安全確保、運営コスト、事業の継続性は、海外展開において相互に関係する課題でした。
一方、谷郷氏は同じ文章で、VTuber文化を世界へ広げるために海外展開を続ける考えも示しています。したがって、ホロライブCNの終了を「カバー株式会社が海外事業全体から撤退した」と表現するのは正確ではありません。
最も慎重な整理は、台湾表記騒動とその後の対応が重要な背景となる一方、公式発表では6名それぞれの卒業理由が個別に詳述されておらず、騒動だけを唯一の原因と断定することはできない、というものです。
【元メンバーの現在】6名のその後と転生先の情報は?
ホロライブ中国の元メンバーについては、卒業後の活動や別名義での配信を調べるファンも少なくありません。VTuber界隈では、以前の活動を終了した人物が別の名前や新しいキャラクターで活動を再開することを、俗に「転生」と呼ぶ場合があります。
ただし、ホロライブCNの卒業と、その後の個人活動は別の話です。カバー株式会社が公表した卒業告知は、所属グループを離れる日程を示したものであり、卒業後の活動名や所属先を一覧にした発表ではありません。
元メンバー6名の名前と、卒業に関して公式発表で案内された予定日は次のとおりです。
- 夜霧(Yogiri):1期生。卒業予定日は2020年12月20日。
- Civia(希薇婭):1期生。卒業予定日は2020年11月18日。
- 黒桃影(Spade Echo):1期生。卒業予定日は2020年11月21日。
- Doris(朵莉丝):2期生。卒業予定日は2020年12月26日。
- Artia(阿媂娅):2期生。卒業予定日は2020年11月19日。
- Rosalyn(罗莎琳):2期生。卒業予定日は2020年12月27日。
2026年現在、元メンバーの現在の活動を調べる際には、本人が公に告知しているアカウントや、本人の活動と確実に結び付けられる公開情報を基準にする必要があります。ファンコミュニティでは、過去の声や配信スタイル、イラストなどを手掛かりに別名義との関連が語られることがありますが、それだけで同一人物だと確定することはできません。
また、卒業後に個人として活動を続けている場合でも、以前の名義や所属時代のキャラクター設定を引き継いでいるとは限りません。本人が公表していない活動名や私生活を、噂だけで特定するのは避けるべきです。
そのため、元ホロライブ中国メンバーの「転生先」を一律に断定するよりも、卒業前の活動記録と、卒業後に本人が公開している活動情報を分けて確認することが、現状を正確に理解する近道です。
【2026年最新情報】ホロライブ中国は復活する?カバーの中国事業はどうなった?
2026年10月時点で、ホロライブ中国の6名が再び同じグループとして活動を始めたことや、ホロライブCNが新メンバーを迎えて再始動することを示す公式発表は確認できません。少なくとも、2020年に活動していたホロライブCNは、現在のホロライブの現役タレントグループとして継続している状態ではありません。
一方で、「カバー株式会社は中国事業から完全撤退したのか」という問いには、表現を分けて答える必要があります。ホロライブCNの所属タレントが全員卒業したことと、カバー株式会社が中国に関係するすべての事業や取引を終了したことは、同じ意味ではありません。
2020年11月の谷郷元昭CEOの説明では、海外事業を継続する意向が明確に示されていました。ホロライブCNの終了は、中国向けに展開していた特定のタレントグループの活動終了を示すものであり、会社全体の海外展開を放棄したという発表ではなかったのです。
したがって、「ホロライブ中国の撤退」という表現は、ホロライブCNというグループの終了を指すのであれば実態に近いものの、カバー株式会社の海外事業全体がなくなったという意味で使うと誤解を招きます。
また、将来の中国市場への再進出についても、可能性と決定事項は区別しなければなりません。過去に海外展開を続ける意向が示されていたからといって、ホロライブCNの復活や中国での新規タレント展開が決まったわけではありません。2026年の現状を把握するうえでは、過去の方針と、その後に公表された具体的な事業計画を分けて確認が必要です。
【プロの結論】ホロライブ中国の騒動から何が分かるのか
ホロライブ中国の終了は、単に炎上したVTuberグループが解散したという話ではありません。国や地域によって異なる政治的な前提を持つ視聴者に向けて、同じエンターテインメントを提供することの難しさが表面化した事例です。
特に大きかったのは、配信上の表記をめぐる問題と、その後の運営会社の対応が連鎖した点です。配信内容への反発だけでなく、日中で異なる声明を出したことが新たな批判を招き、結果として複数のファンコミュニティで信頼の問題が発生しました。
また、海外展開では、現地で人気を得ることと、政治・文化・プラットフォームの事情に対応しながら事業を長期的に維持することは別の課題です。ホロライブCNの事例は、タレント個人の人気だけでは海外事業の継続性を保証できないことを示しています。
一方で、6名の卒業理由を一括して「台湾騒動が原因」と断定することにも注意が必要です。公式発表から確認できるのは、全員の卒業が2020年11月に告知され、11月から12月にかけて順次予定されていたこと、そして運営トップが海外展開の難しさと継続の意思を同時に語っていたことです。この二つを踏まえると、ホロライブ中国の終了は、政治的な炎上と事業運営上の課題が重なった局面として捉えるのが妥当です。
【ホロライブ中国どうなった】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ホロライブ中国はいつ解散したのですか?
A1:2020年11月12日に5名の卒業が発表され、同16日に残る黒桃影の卒業も公表されました。6名は11月から12月にかけて順次卒業し、ホロライブCNとしての活動を終えました。
Q2:ホロライブ中国の全員卒業は桐生ココの台湾表記騒動が原因ですか?
A2:台湾表記騒動とその後のBilibiliを中心とした炎上は、終了までの重要な背景です。ただし、公式発表では6名それぞれの卒業理由が詳しく示されていないため、全員の卒業が騒動だけを直接の理由として決まったと断定することはできません。
Q3:ホロライブ中国の元メンバーは現在どこで活動していますか?
A3:元メンバーの卒業後の活動は、それぞれの本人による公開情報を確認する必要があります。別名義での活動をめぐる情報もありますが、本人が公表していない転生先を、噂だけで確定情報として扱うことはできません。
Q4:カバー株式会社は中国から完全撤退したのですか?
A4:ホロライブCNの活動終了は確認できますが、それをカバー株式会社の海外事業全体の撤退と同一視するのは正確ではありません。2020年11月の谷郷元昭CEOの説明では、海外展開を継続する方針が示されていました。
Q5:ホロライブ中国が2026年に復活する予定はありますか?
A5:2026年10月時点で、ホロライブCNの再結成や新メンバーによる再始動を示す公式発表は確認できません。将来の再進出については、具体的な公式告知が出るまでは決定事項として扱えません。
まとめ:ホロライブ中国の現在と今後の動向を正しく見極める
ホロライブ中国は、2019年に活動を始めた1期生・2期生の計6名が、2020年11月から12月にかけて順次卒業したことで、グループとしての活動を終えました。その背景には、桐生ココと赤井はあとの台湾表記騒動、Bilibiliを中心に広がった批判、カバー株式会社の危機対応をめぐる混乱、そして海外事業の運営上の課題がありました。
ただし、ホロライブCNの終了と、カバー株式会社が海外事業全体から撤退したことは同じではありません。また、6名の卒業を台湾表記騒動だけで説明したり、元メンバーの転生先を未確認の情報だけで断定したりすることも、実態を正しく理解する妨げになります。
2026年現在のホロライブ中国を把握する際は、①2020年当時の公式発表、②カバー株式会社が説明した海外展開の方針、③卒業後の本人による公開情報、の三つを分けて確認することが大切です。ホロライブCNは過去のグループですが、その終了は、国境を越えるVTuber事業が直面する課題を考えるうえで、今も重要な事例となっています。