朝青龍と白鵬は、どちらが強かったのか。大相撲の歴史を振り返るとき、必ずといっていいほど議論になるのが、第68代横綱・朝青龍明徳と第69代横綱・白鵬翔のライバル関係です。幕内優勝回数は朝青龍が25回、白鵬が45回。しかし、土俵上の直接対決を詳しく見ると、優勝回数だけでは測れない両者の実力と意地が浮かび上がります。
象徴的な一番は、2008年1月27日の千秋楽相星決戦です。復帰した朝青龍と勢いに乗る白鵬が優勝を懸けて激突し、白鵬が上手投げで勝利しました。加えて、最後の横綱対決、優勝決定戦での勝敗、そして2026年9月場所終了時点の通算記録を整理すると、二人が相撲界に残したものがより明確になります。
【先に結論】朝青龍と白鵬はどっちが強い?記録が示す答え

キャリア全体の実績で比較するなら、白鵬が大きくリードしています。幕内優勝45回、通算1187勝という数字は、歴代横綱の中でも際立つものです。一方、朝青龍は幕内優勝25回を記録し、短い現役期間の中で圧倒的な存在感を示しました。
ところが、二人が本場所で直接対決した結果は接戦です。通常の取組である本割では白鵬が13勝12敗。優勝決定戦を加えると、朝青龍が15勝14敗で上回ります。つまり、長期的な実績では白鵬、直接対決を優勝決定戦まで含めた勝敗では朝青龍に軍配が上がります。
この違いは、何を「強さ」と呼ぶかによって評価が変わることを示しています。長期間にわたって勝ち続ける安定性、優勝回数、通算勝利数を重視するなら白鵬。短期決戦での勝負強さや、対戦相手に与えた圧力、攻めの鋭さを重視するなら朝青龍にも独自の強みがあります。
なお、直接対決の集計では、本割と優勝決定戦を混同しないことが大切です。単に「白鵬が勝ち越した」「朝青龍が勝ち越した」と表現すると、どの取組を数えたのかによって誤解が生まれます。
【経歴・成績比較】朝青龍明徳と白鵬翔の実績を一覧で確認
日本相撲協会の歴代横綱プロフィールによると、朝青龍は第68代、白鵬は第69代の横綱です。二人はともにモンゴル・ウランバートル出身で、異なる個性を持ちながら平成から令和へ続く大相撲の歴史に大きな足跡を残しました。
| 比較項目 | 朝青龍明徳 | 白鵬翔 |
|---|---|---|
| 横綱の代数 | 第68代 | 第69代 |
| 生年月日 | 1980年9月27日 | 1985年3月11日 |
| 出身地 | モンゴル・ウランバートル | モンゴル・ウランバートル |
| 初土俵 | 1999年1月場所 | 2001年3月場所 |
| 新入幕 | 2001年1月場所 | 2004年5月場所 |
| 横綱昇進 | 2003年3月場所 | 2007年7月場所 |
| 横綱在位期間 | 2003年3月~2010年1月 | 2007年7月~2021年9月 |
| 幕内優勝回数 | 25回 | 45回 |
| 生涯戦歴 | 669勝173敗76休 | 1187勝247敗253休 |
| 幕内戦歴 | 596勝153敗76休 | 1093勝199敗253休 |
| 引退時期 | 2010年1月場所後 | 2021年9月場所 |
出典:日本相撲協会「歴代横綱」「力士プロフィール」。2026年9月場所終了時点の比較として整理。両者は引退しているため、現役時代の通算成績はその後更新されていない。
数字で際立つのは、白鵬の現役期間と優勝回数です。朝青龍が67場所で669勝を挙げたのに対し、白鵬は122場所で1187勝を記録しました。白鵬は朝青龍より長く土俵に立ち、優勝を積み重ねています。
ただし、生涯勝利数だけで一番の強さを決めるのは公平な比較とは限りません。出場場所数や休場数、全盛期の重なり方が異なるからです。朝青龍は2003年に横綱へ昇進し、白鵬が横綱になる2007年まで、相撲界の頂点を長く支えました。白鵬はその後も長期間にわたって第一人者であり続けた点に特徴があります。
両者の幕内優勝を合わせると70回。朝青龍の25回も歴代屈指の実績ですが、白鵬の45回は歴代最多です。この20回の差こそ、二人のキャリアを比較するときに最も大きな違いとなります。
【2008年1月27日の名勝負】千秋楽相星決戦で何が起きたのか
朝青龍と白鵬のライバル関係を象徴する一番が、2008年1月27日の初場所千秋楽です。14日目を終えた時点で、両横綱はともに13勝1敗。優勝の行方は、最後の直接対決に委ねられました。
朝青龍は、2007年の夏巡業をめぐる問題で2場所連続の出場停止処分を受けた後、2008年初場所で本場所に復帰していました。復帰した横綱が再び優勝を狙う一方、白鵬はすでに2場所連続優勝を果たしており、3場所連続優勝を懸けていました。両者の背景が重なったことで、この一番は単なる優勝争い以上の注目を集めました。
取組では、立ち合いから白鵬が優位に立ち、得意の右四つへ持ち込みます。朝青龍も深く下手を取り、両者は土俵中央でがっぷり四つに組みました。互いに引き付け合う力勝負となり、最後は白鵬が左上手からの上手投げで朝青龍を破りました。
AFPBB Newsなどの当時の報道によると、白鵬は14勝1敗で3場所連続、通算6回目の幕内優勝を達成。朝青龍は13勝2敗で場所を終えました。約5年半ぶりとなった横綱同士の千秋楽相星決戦は、両者の実力が正面からぶつかった一番として記憶されています。
しかし、この勝利だけでライバル関係の優劣が決まったわけではありません。2008年3月場所では朝青龍が千秋楽の相星決戦で白鵬を小手投げで破り、22回目の優勝を飾っています。前場所の敗北に対して、次の直接対決で結果を出したのです。
この2場所の連続した展開が、二人の名勝負を語るうえで大切です。白鵬は力勝負で朝青龍を圧倒できることを示し、朝青龍は相手に敗れたままでは終わらない勝負強さを証明しました。
【対戦成績と最後の横綱対決】本割25番と優勝決定戦4番の真実
二人の直接対決は、通常の本割だけを見るか、優勝決定戦まで含めるかによって勝敗が変わります。スポーツナビなどの対戦記録や大相撲の取組資料を基に整理すると、本場所での対戦は本割25番、優勝決定戦4番の合計29番です。
本割では白鵬が13勝12敗と1勝リードしています。一方、優勝決定戦は朝青龍が3勝1敗。両方を合わせた通算成績は、朝青龍の15勝14敗です。
優勝決定戦で朝青龍が強さを見せた代表例が、2009年の初場所と秋場所です。2009年1月場所では、白鵬との優勝決定戦を寄り切りで制して23回目の優勝を達成しました。同年9月場所も、本割では白鵬に敗れたものの、14勝1敗で並んだ後の優勝決定戦ですくい投げを決め、24回目の優勝を手にしています。
特に2009年秋場所は、朝青龍の勝負強さを示す一番でした。本割で敗れた相手に、優勝が懸かった決定戦で勝つ。結果だけではなく、負けた直後に立て直す精神面も、横綱としての評価につながりました。
そして、朝青龍対白鵬の最後の対戦となったのが、2010年1月24日の初場所千秋楽です。白鵬が寄り倒しで朝青龍を破りました。日刊スポーツの当時の報道によると、朝青龍はこの場所で13勝2敗を記録し、14日目に25回目の優勝を決めていました。
朝青龍はこの初場所後に引退を表明しています。そのため、この取組が二人の現役時代における最後の対戦となりました。勝負の結果は白鵬の勝利でしたが、直接対決全体では、優勝決定戦での実績も含めて朝青龍がわずか1勝差で上回っています。
「最後の横綱対決」という言葉を調べる際は、2008年の千秋楽相星決戦と、2010年1月の最後の直接対決を区別することが大切です。前者は優勝を懸けた名勝負、後者は朝青龍の現役最後の一番です。
【横綱時代を比較】攻めの朝青龍と安定感の白鵬は何が違ったのか
朝青龍と白鵬は、同じモンゴル出身の横綱でありながら、土俵上の個性には違いがありました。日本相撲協会のプロフィールでは、朝青龍の得意技は右四つ、寄り、突っ張り。白鵬は右四つ、寄り、上手投げを得意としています。
朝青龍の魅力は、攻めに転じるまでの速さと勝負への強い執着でした。立ち合いから相手の体勢を崩し、休まず前に出る。四つに組んでも、相手の出方を見ながら攻めの形を変えられる柔軟性がありました。184センチという体格を生かしながら、相手に考える時間を与えない相撲が持ち味でした。
一方、192センチの白鵬は、朝青龍より身長が高く、右四つからの攻防や上手投げで力を発揮しました。体格と技術を生かし、相手の攻めを受け止めてから勝機をつかむ取り口も強みでした。長い現役生活を通じて技術と経験を積み重ねたことが、優勝45回という記録の背景にあります。
両者の差をさらに際立たせるのが、連続優勝の実績です。朝青龍は2004年11月場所から2006年1月場所まで7場所連続優勝を達成。白鵬も2010年3月場所から2011年7月場所まで7場所連続優勝を記録しました。どちらも、一時的な好調ではなく、長期間にわたって他の力士を上回る力を発揮しています。
ただし、朝青龍の全盛期と白鵬の全盛期は完全には重なっていません。白鵬が横綱に昇進した2007年7月以降、二人は同じ最高位で競い合いましたが、朝青龍は2010年1月場所後に引退しています。その後も白鵬は約11年にわたり横綱として土俵に立ちました。
このため、二人を比較するときには、全盛期の直接対決と、キャリア全体の実績を分けて評価する必要があります。対戦相手としての朝青龍は白鵬にとって大きな壁であり、白鵬は朝青龍の引退後も記録を伸ばし続けた横綱でした。
【2026年の現在】二人の関係と相撲界での新たな歩み
2026年現在、朝青龍と白鵬はともに現役を引退しています。ただし、二人の相撲人生が土俵から離れたところで終わったわけではありません。引退後の歩みはそれぞれ異なり、白鵬は相撲の普及に向けた活動で新たな役割を担っています。
白鵬は2021年9月場所を最後に現役を引退し、年寄・宮城野として後進の指導に携わりました。その後、日本相撲協会を2025年6月に退職。協会の外から相撲文化の発展に貢献する道を選びました。
2026年10月16日には、アマチュア相撲の国際統括団体である国際相撲連盟の会長に就任したと発表されています。神戸新聞などの報道によると、白鵬は相撲の伝統や精神を世界に広め、次の世代につなげることを目指しています。現役時代に築いた知名度と経験を、競技の国際的な普及に生かす段階に入っています。
朝青龍は2010年1月場所後に現役を退き、相撲協会の親方として後進を指導する道ではなく、引退後の活動を続けてきました。2026年5月には、白鵬のYouTubeチャンネルで二人の初対談が公開されました。現役時代には何度も土俵で対峙した二人が、過去の名勝負や思い出を語り合ったことが話題になりました。
対談では、2008年夏場所の千秋楽に起きた取組後の出来事も話題に上がりました。朝青龍が白鵬へのダメ押しを振り返ると、白鵬は当時の出来事を回想。スポニチなどの報道では、白鵬が「結局私が悪者になったんですよね」と笑いながら語った様子が伝えられています。
この対談から読み取れるのは、二人の関係を現役時代の勝敗や土俵上の衝突だけで説明することはできない、ということです。勝負の最中には激しくぶつかり合った一方で、引退後には同じ時代を戦った力士として過去を振り返る機会も生まれています。
2026年9月場所終了時点の成績比較という観点では、両者の現役時代の記録はすでに確定しています。現在の相撲界における役割や活動は変化していますが、幕内優勝45回と25回、そして直接対決の15勝14敗という記録が示す関係は変わりません。
【プロの結論】朝青龍と白鵬の強さは、評価する基準によって答えが変わる
朝青龍と白鵬の比較で重要なのは、ひとつの数字だけで歴代最強を決めないことです。両者は同じ時代に競い合った横綱ですが、現役期間、得意技、優勝の積み重ね方が異なります。
キャリア全体の優勝実績と通算勝利数を重視するなら、白鵬の実績が際立ちます。幕内優勝45回は歴代最多で、長期にわたって最高水準の成績を維持したことを示しています。
一方、二人の直接対決に焦点を絞るなら、本割では白鵬が13勝12敗、優勝決定戦を含めれば朝青龍が15勝14敗です。特に優勝決定戦で朝青龍が4番中3勝を挙げた事実は、勝負が懸かった場面での強さを考えるうえで注目です。
評価の基準は、次のように整理できます。
- キャリア全体の実績を知りたい人:幕内優勝回数、通算勝利数、横綱在位期間を比較する。
- 二人の直接対決を知りたい人:本割と優勝決定戦を分け、対戦条件をそろえて比較する。
- 名勝負の魅力を知りたい人:2008年1月27日の相星決戦、同年3月の雪辱、2009年の優勝決定戦を振り返る。
こうした基準を使えば、「朝青龍と白鵬はどっちが強いのか」という問いに、より具体的に答えられます。白鵬は記録を積み上げた大横綱であり、朝青龍は勝負の激しさと短期決戦での強さが際立つ横綱でした。どちらか一方だけを評価するのではなく、異なる強さを持つ二人が同じ土俵で競い合ったこと自体が、平成の大相撲を象徴しています。
【朝青龍白鵬】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:朝青龍と白鵬の対戦成績は何勝何敗ですか?
A1:本割25番では白鵬が13勝12敗です。優勝決定戦4番では朝青龍が3勝1敗のため、両方を合わせた29番の通算成績は朝青龍の15勝14敗となります。
Q2:朝青龍と白鵬の幕内優勝回数はそれぞれ何回ですか?
A2:朝青龍は25回、白鵬は45回です。白鵬の45回は大相撲の歴代最多記録です。二人の優勝回数を合わせると70回になります。
Q3:朝青龍と白鵬の最後の対戦はいつですか?
A3:2010年1月24日の初場所千秋楽です。白鵬が寄り倒しで朝青龍を破りました。朝青龍はこの場所で25回目の優勝を果たし、その後、現役を引退しました。
まとめ:朝青龍と白鵬の記録から見える横綱の条件
朝青龍と白鵬は、幕内優勝70回という圧倒的な実績を合わせ持つ二人です。朝青龍は25回の優勝と、優勝決定戦での勝負強さを残しました。白鵬は45回の幕内優勝と通算1187勝を記録し、歴代最多の優勝記録を打ち立てました。
2008年1月27日の千秋楽相星決戦は、白鵬が上手投げで勝利した名勝負です。しかし、その後も朝青龍は直接対決で勝利を重ね、優勝決定戦を含めた通算成績では15勝14敗と上回りました。最後の対戦は2010年1月24日。白鵬の勝利をもって、二人の現役時代の直接対決は幕を閉じました。
2026年には、白鵬が国際相撲連盟の会長に就任し、相撲の普及に向けた新たな役割を担っています。朝青龍との初対談も実現し、二人の関係は現役時代の勝敗だけでは語れない広がりを見せています。
歴代横綱を比較する際は、優勝回数や通算勝利数だけでなく、直接対決、優勝決定戦、全盛期の重なり方まで確認することが大切です。記録を多角的に見ることで、朝青龍と白鵬がそれぞれどのような強さを持ち、なぜ今も語り継がれているのかが見えてきます。