「技のデパート」とは、相手の力を正面から受け止めるだけでなく、多彩な技や意表を突く動きで勝負を決める力士に贈られる異名です。その代表格として知られるのが、元小結の舞の海秀平。小柄な体を生かした奇策で平成の大相撲を沸かせ、「技のデパート」という呼び名を広く定着させました。
その系譜には、独特の取り口で人気を集めた旭鷲山の「モンゴル支店」、そして令和の土俵で多彩な技を見せる宇良の存在があります。2026年10月時点で確認できる日本相撲協会の公式記録も踏まえながら、異名の由来、舞の海の決まり手、歴代の技巧派力士、宇良との違いまで整理します。
【結論】技のデパートとは誰?元祖・舞の海秀平から現代の宇良まで

「技のデパートは誰?」という疑問への答えとして、まず挙がるのが元小結・舞の海秀平です。青森県西津軽郡鰺ヶ沢町出身で、1968年2月17日生まれ。出羽海部屋に所属し、1990年5月場所で初土俵を踏み、1991年9月場所に新入幕を果たしました。
舞の海の魅力は、単純な力比べに持ち込まない取り口にありました。相手の懐へ潜り込む、立ち合いで意表を突く、足を取る、相手の体勢を崩して倒す。技の選択肢が多く、対戦相手に次の動きを読ませにくいことが特徴です。
日本相撲協会の公式プロフィールによると、舞の海の最高位は小結。現役時代には技能賞を5回受賞し、1999年11月場所を最後に引退しました。横綱や大関には届かなかったものの、技術と発想で大型力士に立ち向かう姿が、相撲ファンの強い印象に残っています。
この異名は、相撲協会が認定する公式タイトルではありません。百貨店にさまざまな商品が並ぶように、ひとりの力士が多種多様な技を繰り出すことを表現した呼び名です。舞の海がその代表として知られるようになり、技巧派力士を語る際にも使われるようになりました。
現在は宇良のような多彩な取り口を持つ力士にも、この表現が重ねられます。ただし、宇良が舞の海と同じ公式称号を受けているわけではありません。あくまで相撲の特徴を説明するための比喩であり、時代ごとの力士を比較する際に使われる言葉です。
【異名の由来】舞の海が「技のデパート」と呼ばれた本当の理由
舞の海が「技のデパート」と呼ばれた最大の理由は、体格の不利を技術と工夫で補ったことにあります。身長や体重で勝る相手と真正面からぶつかれば、押し負けたり、組み止められたりする危険が高まります。そこで舞の海は、相手の得意な形に持ち込ませない相撲を追求しました。
日本相撲協会の公式クイズでは、舞の海が新弟子検査を受けた1990年当時、必要な身長は173センチ以上だったと紹介されています。身長169センチだった舞の海は基準に届かず、頭部にシリコンを注入する手術を受けて検査に合格しました。入門そのものに工夫が必要だったという経緯は、彼の相撲人生を象徴するエピソードです。
もっとも、体が小さいだけで「技のデパート」と呼ばれたわけではありません。小兵力士が勝つには、相手の動きや重心を読み、瞬間的に有利な位置を取る必要があります。舞の海は、そのための選択肢を増やし、立ち合いから勝負が決まるまでの展開を多彩にしました。
関東弁護士会連合会のインタビューで、舞の海自身も、小さな体では普通に相撲を取っても大きな相手に勝てないため、どうすれば勝てるかを常に考えていたと振り返っています。技の名前を先に決めて練習するというより、勝つために試した動きに、後から決まり手の名前が付くことも多かったと説明しています。
この証言から分かるのは、奇策が単なる奇抜さではなかったという点です。相手の体格や反応を観察し、勝つ可能性のある動きを探し続ける。その積み重ねが、予測の難しい取り口につながりました。
つまり「技のデパート」という異名の本質は、技の数だけではありません。体格差という制約を分析し、相手に合わせて勝ち筋を変えられる柔軟性こそが、舞の海の強みだったのです。
【決まり手を解説】猫だまし・八艘飛び・三所攻めは何がすごい?
舞の海の名前とともによく挙がるのが、猫だまし、八艘飛び、三所攻め、足取り、内無双などです。いずれも相手の予想を外したり、体勢の崩れた瞬間を突いたりする工夫が表れています。ただし、これらがすべて同じ意味での「決まり手」というわけではありません。
猫だましは、立ち合いなどで相手の目の前に両手を打ち鳴らし、反射的な動きを誘う奇策です。相手がひるんだ一瞬を利用して攻めますが、相手が動じなければ逆に不利になることもあります。勝負を決める公式の決まり手というより、相手の注意をそらすための戦術です。
八艘飛びは、立ち合いで大きく跳ぶように動き、正面衝突を避けて相手の攻撃をかわす取り口を指す表現です。力任せのぶつかり合いを避けられる一方、タイミングを誤れば相手に対応されます。成功させるには、相手の出方を読む判断力と身体操作が欠かせない。
一方、三所攻めは、相手の足や体を複数の方向から同時に攻め、バランスを崩す高度な技です。舞の海はこの珍しい技でも知られています。日本相撲協会の解説でも、決まり手が制定された後、幕内で初めて三所攻めを決めた力士として紹介されています。
足取りは相手の脚を取って前進する技で、内無双は相手の膝付近を内側から払うようにして倒す技です。いずれも、相手の力を正面から受け止めるのではなく、重心や足の運びを利用する点に特徴があります。
ここで押さえておきたいのが、実況や記事で使われる「技の名前」と、日本相撲協会が勝敗記録に付ける「決まり手」の違いです。立ち合いの奇策が注目されても、それ自体が公式記録上の決まり手になるとは限りません。技のデパートと呼ばれる理由を理解するには、勝った技だけでなく、勝負の流れを変えた動きにも目を向ける必要があります。
2019年には、幕内で三所攻めが久しぶりに記録され、舞の海が過去に見せた技として報じられました。珍しい技が長い年月を経て再び話題になることも、舞の海の相撲が今なお語り継がれる理由の一つです。
【歴代比較】舞の海・旭鷲山・宇良の違いと「モンゴル支店」の経緯
「技のデパート」という表現の歴史を整理するうえで欠かせないのが、旭鷲山です。モンゴル出身の旭鷲山は、独特の技と優れた運動能力で日本の相撲ファンを魅了し、舞の海になぞらえて「技のデパート・モンゴル支店」と呼ばれました。
旭鷲山は1973年3月8日生まれ。日本相撲協会の公式プロフィールによると、1992年3月場所で初土俵を踏み、1995年3月場所に新十両、1996年9月場所に新入幕、1997年3月場所に新三役を果たしています。最高位は舞の海と同じ小結で、2006年11月場所を最後に引退しました。
nippon.comのモンゴル人力士に関する解説では、旭鷲山は上手投げ、掛け投げ、外無双、内無双、かいなひねり、ちょん掛けなど、多彩な技を繰り出した力士として紹介されています。特に外無双のような珍しい技でも存在感を示し、「モンゴル支店」という異名が定着しました。
舞の海が小柄な体格を生かして相手の懐に潜り込む相撲を得意としたのに対し、旭鷲山はモンゴル出身力士らしい運動能力と、組み手や投げ技を含む幅広い技術で観客を沸かせました。同じ異名で語られていても、勝ち方は一様ではありません。
そして令和の技巧派として名前が挙がるのが宇良です。以下の表で、三人の経歴と異名の位置づけを比較します。
| 力士 | 異名・位置づけ | 主な実績・特徴 |
|---|---|---|
| 舞の海秀平 | 「技のデパート」の代表格 | 1990年5月初土俵、1991年9月新入幕。最高位は小結。技能賞5回。1999年11月場所を最後に引退。 |
| 旭鷲山 | 「技のデパート・モンゴル支店」 | モンゴル出身。1992年3月初土俵、1996年9月新入幕。多彩な投げ技や無双系の技で知られ、最高位は小結。 |
| 宇良 | 令和の技巧派として比較される力士 | 2015年3月初土俵、2017年3月新入幕。最高位は小結。足取りなどを持ち味とし、2026年9月場所は10勝5敗。 |
この三人を「歴代の技のデパート」として並べる場合、注意したいのは、公式に定められた歴代受賞者の一覧が存在するわけではないことです。舞の海と旭鷲山は異名との結び付きが特に強く、宇良は技の多彩さという共通点から現代の比較対象として語られます。
したがって、三人を単純に技の数だけで順位付けするより、どのような体格や得意技を生かし、相手の意表を突いてきたのかを比較するほうが、相撲の面白さが見えてきます。
【2026年最新】宇良は現在の「技のデパート」なのか?舞の海との比較
宇良和輝は、大阪府寝屋川市出身で、1992年6月22日生まれ。木瀬部屋に所属し、2015年3月場所で初土俵を踏みました。日本相撲協会の公式プロフィールでは、身長173センチ、体重138キロ、最高位は小結。得意技は押しと足取りとされています。
2026年9月場所では東前頭9枚目で10勝5敗を記録しました。同年の1月場所は4勝11敗、3月場所は5勝10敗、5月場所は10勝5敗、7月場所は5勝10敗と、場所ごとに成績が変動しています。直近の本場所で勝ち越したことは、2026年現在の宇良を語るうえで押さえておきたい事実です。
宇良が舞の海と比較される理由は、体格の不利を補うために相手の懐へ潜り込み、足を取るなどの技を使い分ける点にあります。予測しにくい動きで相手の体勢を崩すところは、平成の舞の海に通じるものがあります。
ただし、二人の体格や取り口は同一ではありません。舞の海は軽量の小兵力士として知られ、正面からの力比べを避ける工夫が際立ちました。宇良は公式プロフィール上の体重が138キロあり、押し出しや寄り切りでも勝っています。小兵らしい奇策だけでなく、相手に応じて正攻法も組み合わせる力士です。
日本相撲協会の公式プロフィールに掲載された宇良の直近6場所の決まり手傾向では、押し出しが29%、寄り切りが14%、肩透かしが10%で、その他が47%となっています。珍しい技ばかりで勝っているわけではなく、基本的な決まり手も使いながら、多様な勝ち筋を持っていることが分かります。
この点は「舞の海と宇良の比較」で見落とされがちな部分です。似ているのは、技の名前や体格そのものではなく、相手の出方を見ながら攻め方を変え、勝負の選択肢を複数持っていること。宇良は、舞の海の単純な再現ではなく、現代の土俵で独自の技巧を磨いてきた力士と捉えるのが適切です。
2026年現在、宇良を「技のデパート」と呼ぶ表現は、こうした技術の多彩さを説明する言い方として理解できます。ただし、これは公式な称号でも、将来の成績を保証する評価でもありません。最新の番付や星取表と、実際の取組内容を併せて見ることが大切です。
【プロの結論】「技のデパート」の真相は技の数より勝ち筋の多さにある
「技のデパート」の意味を、珍しい決まり手をたくさん持つ力士という説明だけで終わらせると、本質を見落とします。大相撲では、相手の体格、立ち合いの癖、重心の位置、組み手などによって有効な攻め方が変わります。多彩な技は、それぞれ異なる状況に対応するための選択肢です。
舞の海の強みは、小さな体で大型力士と同じ相撲を取るのではなく、相手が想定していない展開へ勝負を動かしたことでした。旭鷲山は投げ技や無双系の技を織り交ぜ、宇良は足取りや肩透かしなどを使いながら、押し出しや寄り切りでも白星を重ねています。三人に共通するのは、勝ち方が一つに固定されていない点です。
また、「技のデパート」と「奇手ばかり使う力士」は同じではありません。珍しい技は相手の意表を突ける半面、失敗すれば体勢を崩す危険があります。技術の幅が広い力士ほど、いつ奇策を使い、いつ基本に忠実な相撲を取るかという判断も求められます。
この異名を理解するための判断基準は、次の三つです。
- 技の多様性:足取りや投げ技など、異なる攻め方を使い分けられるか。
- 状況への対応力:相手の体格や立ち合いに応じて、攻め方を変えられるか。
- 勝負への結び付き:珍しい動きを見せるだけでなく、実際の白星につなげられるか。
この三つの視点を持つと、単に珍しい決まり手が出たかどうかだけでなく、取組のどこに工夫があったのかを見つけやすくなります。舞の海が引退から年月を経ても語られ、旭鷲山の異名が記憶され、宇良が現代の技巧派として比較される理由も、ここにあります。
【技のデパート】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「技のデパート」とは誰のことですか?
A1:代表的には元小結の舞の海秀平を指します。小柄な体を生かした多彩な技と奇策で知られ、この異名が広く定着しました。
Q2:「技のデパート・モンゴル支店」と呼ばれた力士は誰ですか?
A2:元小結の旭鷲山です。投げ技や外無双、内無双など多彩な技を繰り出したことから、舞の海になぞらえた異名で呼ばれました。
Q3:舞の海の代表的な決まり手や奇策は何ですか?
A3:三所攻め、足取り、内無双などが知られています。また、猫だましや八艘飛びも有名ですが、これらは公式の決まり手と同じ分類ではなく、立ち合いなどで使う戦術や動きを指す表現です。
Q4:宇良も「技のデパート」と呼ばれていますか?
A4:宇良は多彩な技を使う現代の技巧派として、舞の海と比較される力士です。ただし、「技のデパート」は公式な称号ではなく、宇良が同じ称号を正式に受けたという意味ではありません。
Q5:2026年現在、宇良の成績はどうなっていますか?
A5:日本相撲協会の公式プロフィールによると、2026年9月場所は東前頭9枚目で10勝5敗でした。最新の番付や成績を確認する際は、場所ごとの公式記録を見るのが確実です。
Q6:「技のデパート」は相撲協会の公式称号ですか?
A6:いいえ。技の多彩さや取り口の柔軟性をたたえる異名です。公式の表彰や番付上の資格ではありません。
まとめ:舞の海から宇良へ続く技巧派の魅力
「技のデパート」の代表格は舞の海秀平です。小柄な体格を補うために多彩な技を磨き、技能賞5回、最高位小結という実績を残しました。旭鷲山は「モンゴル支店」と呼ばれるほど独自の技術で人気を集め、宇良は現代の技巧派として、その系譜と比較される存在になっています。
2026年現在も、この言葉は多彩な攻め方を持つ力士の魅力を伝える表現として使われています。ただし、珍しい技の数だけで力士の実力を判断するのは早計です。相手の動きを読み、状況に応じて技を選び、白星へ結び付ける能力に目を向けることで、大相撲の奥深さがより鮮明になります。
舞の海、旭鷲山、宇良。それぞれの時代や体格、得意技は異なりますが、観客の予想を超える一手で土俵を沸かせるという魅力は共通しています。「技のデパート」という異名は、単なる技の多さではなく、相撲の可能性を広げてきた技巧派への賛辞なのです。